Written by WizLANSCOPE編集部

脆弱性とは、システムやネットワーク・アプリケーションなどのコンピュータ関連の資産に存在するセキュリティ上の弱点や欠陥のことです。
脆弱性は、設計上のミスやソースコードの記述不備などによって発生します。
この脆弱性を放置してしまうと、サイバー攻撃の起点となり、情報漏洩や不正アクセスなどの被害を生む恐れがあるため、迅速な修正が求められます。
本記事では、脆弱性の基礎知識に加え、発生原因や放置リスク、対策などを解説します。
▼本記事でわかること
- 脆弱性の概要
- 脆弱性の発生原因
- 脆弱性がもたらすリスク
- 脆弱性への対策
脆弱性に関する基礎知識を身に着けたい方は、ぜひご一読ください。
脆弱性とは?
「脆弱性(vulnerability)」とは、システム、アプリケーション、ネットワーク、あるいは組織のセキュリティに存在する「弱点」や「欠点」のことを指します。
この脆弱性を悪用されてしまうと、システムへの不正侵入や情報漏洩、マルウェア感染、さらにはサービスの停止といった深刻な被害につながる恐れがあります。
システムやアプリケーションに脆弱性が発見されると、多くの場合、ソフトウェアやシステムを提供するベンダー(メーカー)から、脆弱性を修正するセキュリティパッチ(修正プログラム)が公開されます。
セキュリティパッチを速やかに適用して、脆弱性を修正することが、サイバー攻撃から身を守る上で非常に重要です。
適用が遅れると、その脆弱性を悪用され、サイバー攻撃の標的となるリスクが高まります。
セキュリティホールとの違い
脆弱性と混同しやすい言葉に「セキュリティホール」が挙げられます。
この2つの言葉は同じ意味で使われるケースもありますが、厳密には異なる概念です。
セキュリティホールは、プログラムのバグや設定ミスなど、ソフトウェアやアプリケーションに存在する明確な欠陥や不備を指します。
一方で、脆弱性はさらに広い概念です。
ソフトウェアやハードウェアの問題だけでなく、システム設定の不備、管理体制の甘さ、人為的ミスなど、システム全体におけるセキュリティ上の弱点を「脆弱性」と呼びます。
つまり、セキュリティホールは脆弱性の一種であり、どちらも攻撃の対象となり得る点では共通していますが、脆弱性の方がより包括的な概念です。

脆弱性が発生する原因
脆弱性が発生する主な原因としては、以下が挙げられます。
- 設計ミス
- 人為的なミス
- 新たなサイバー攻撃
- 外部ライブラリの問題
それぞれ解説します。
設計ミス
システムやアプリケーションの設計段階でセキュリティ要件が適切に定義・実装されていない場合、構造的な脆弱性が生じてしまいます。
たとえば、開発時にスピードや機能を優先し、セキュリティ対策が後回しにされると、設計段階から多くのセキュリティホールが残ることになります。
こうした脆弱性は、リリース後に重大なセキュリティインシデントを引き起こすリスクがあるだけでなく、修正に時間とコストがかかる可能性もあります。
この問題を防ぐ方法として、「セキュリティ・バイ・デザイン」の導入が挙げられます。
セキュリティ・バイ・デザインとは、要件定義・設計などの初期段階からセキュリティを考慮し、プロセスに組み込む考え方で、定期的なコードレビューやセキュリティテストの実施で、セキュリティ強化が期待できます。
人為的なミス
脆弱性の多くは、ソースコードの記述ミスやシステム設定の誤りといった人為的なミスに起因します
ソースコードの記述ミスにおける脆弱性の代表例としては、入力値検証の不備に起因するインジェクション攻撃(SQLインジェクション、OSコマンドインジェクションなど)が挙げられます。
入力値の検証を十分におこなわないまま、データベースクエリやシステムコマンドに入力を直接組み込むと、攻撃者によって悪意のあるコードを実行される危険性があります。
また、設定不備による脆弱性も存在します。
たとえば、アクセス制御の設定不備によって、本来権限のないユーザーが機密データにアクセスできるケースや、デフォルトパスワードの変更漏れなどが挙げられます。
このような人的ミスに起因する脆弱性への対策としては、以下のような対策が有効です。
- 開発者や運用担当者への定期的なセキュリティ教育の実施
- 設定内容のダブルチェック
- 多要素認証の導入
- 自動化ツールを活用した誤設定検出
新たなサイバー攻撃
サイバー攻撃の手法は日々進化しており、開発時には想定されていなかった攻撃手口や経路によって、システムの脆弱性が後から判明することがあります。
また、昨今の攻撃手法の高度化・多様化により、当初は安全と考えられていた設計や実装にも、新たなリスクが生じる可能性があります。
たとえば近年では、脆弱性を突く以下のようなサイバー攻撃が注目されています。
ゼロデイ攻撃 | ・ソフトウェアの未修正の脆弱性(ベンダーも把握していない)を悪用する攻撃 ・攻撃が先行するため、パッチ適用が間に合わず被害が拡大しやすい |
---|---|
サプライチェーン攻撃 | ・開発や運用に関わる外部ベンダーやソフトウェアを侵害し、そこからターゲットに侵入する攻撃 |
論理的脆弱性の悪用 | ・仕様や設計の「抜け」を突く攻撃で、システムの動作は正しくても、想定外の使い方で情報を取得・操作される |
このようにサイバー攻撃は日々進化しているため、最新の攻撃動向や手法を常に把握し、継続的なリスク評価と更新が求められます。
外部ライブラリ
外部ライブラリとは、ソフトウェア開発において再利用可能なコードや機能を提供するプログラムのことです。
外部ライブラリを活用すると、ゼロからコードを記述する手間を省くことができ、開発の効率化やコスト削減が期待できます。
しかし一方で、開発者が直接制御できない領域にセキュリティリスクを抱えるという課題もあります。代表例として、以下が挙げられます。
- 外部ライブラリ自体に脆弱性が含まれている
- 脆弱性が修正されていない古いバージョンが使われている
- 依存関係にある別ライブラリに脆弱性がある
これらのリスクを回避するためには、外部ライブラリを選定する際に、信頼性やセキュリティを十分に評価することが求められます。
また、ライブラリの更新情報を定期的にチェックし、開発元から脆弱性の修正が提供された際は、迅速にアップデートすることが重要です。
代表的な脆弱性
ここでは、Webアプリケーションやシステムでとくに多く見られる、代表的な脆弱性の種類とその影響について紹介します。
これらの脆弱性は、侵入の足がかりとして頻繁に悪用されるため、十分な理解と対策が欠かせません。
脆弱性の種類 | 概要 | 主な被害例 |
---|---|---|
SQLインジェクション | 入力フォームなどに不正なSQL文を挿入し、データベースを不正に操作する攻撃 | ・個人情報の漏洩 ・データベースの改ざんや破壊・削除 |
クロスサイトスクリプティング(XSS) | Webページに悪意あるスクリプトを埋め込み、閲覧者のブラウザ上で実行させる攻撃 | ・Cookie情報の窃取 ・フィッシングサイト誘導 ・なりすましによるログイン |
クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF) | ユーザーのログインした状態を悪用し、リクエストを偽装する攻撃 | ・登録情報・パスワードなどの不正な変更 ・不正送金 |
OSコマンドインジェクション | リクエストに不正なOSコマンドを注入し、Webサーバー側で意図しない不正な命令を実行させる攻撃 | ・サーバー操作の乗っ取り ・ファイルの改ざん、削除 ・情報漏洩 |
バッファオーバーフロー | 記憶領域に許容量を超えるデータを送信し、動作不良や機能停止を引き起こす攻撃 | ・システム停止 ・管理者権限の奪取 |
ディレクトリトラバーサル | ファイルパスを不正に操作し、アクセス権限のないファイルやディレクトリに侵入する攻撃 | ・設定ファイルの漏洩 ・Webコンテンツの改ざん・削除 ・アカウント乗っ取り |
これらの脆弱性は、適切な入力バリデーション・アクセス制御・脆弱性診断などにより、被害を防ぐことが可能です。
脆弱性を放置するリスク
脆弱性を放置すると、以下のようなリスク・危険性が生じる恐れがあります。
- 機密情報や個人情報の漏洩
- マルウェア感染
- 社内システムへの不正侵入
機密情報や個人情報の漏洩
脆弱性を悪用されると、機密情報や個人情報が漏洩する危険があります。
顧客データやクレジットカード情報が漏洩した場合、企業は金銭的な損失だけでなく、ブランドイメージの低下や顧客から信頼喪失といった深刻なリスクに直面します。
さらに、被害者への損害賠償責任を負うなど、法的問題へ発展する可能性もあります。
マルウェア感染
マルウェアとは、コンピューターやシステムに対して不正な挙動を引き起こす悪意のあるソフトウェアの総称です。
代表例として、コンピュータウイルスやスパイウェア、トロイの木馬、ランサムウェアなどが挙げられます。
脆弱性を放置してしまうと、これらのマルウェアに感染しやすくなるリスクが高まります。
マルウェア感染経路として、Webアプリケーションを介したドライブバイダウンロード攻撃や、OSやブラウザの脆弱性を悪用したリモートコードの実行などが挙げられます。
マルウェアに感染してしまうと、データの改ざんや破壊やシステムの乗っ取りなど、さまざまな被害が発生する恐れがあります。
また、感染デバイスからほかシステムへマルウェアを拡散するなど、サイバー攻撃の踏み台に利用されるリスクもあり、早急な対処が求められます。
社内システムへの不正侵入
OSやソフトウェアの脆弱性を放置すると、社内システムに不正に侵入されるリスクが高まります。
システムに不正に侵入され、管理者権限が攻撃者に乗っ取られた場合、データの盗難や改ざん、さらにはシステムの停止に追い込まれる危険性があります。
さらに、システム侵入後にランサムウェアが展開された場合、データが暗号化され、情報資産が使用できなくなるリスクがあります。
こうしたセキュリティインシデントが発生すると、調査や復旧作業のためにシステムを一時停止しなければならず、ビジネス機会の損失は避けることができません。
脆弱性への対策
サイバー攻撃の被害を防ぐには、脆弱性を「見つける」「把握する」「対処する」といった継続的な対策が欠かせません。
ここでは、脆弱性への代表的な対策と実践におけるポイントを紹介します。
- 最新の脆弱性情報の収集
- 定期的な脆弱性診断の実施
- IT資産の適切な管理
詳しく確認していきましょう。
最新の脆弱性情報の収集
脆弱性への対策を適切に実施するためには、セキュリティに関する最新情報の継続的な収集が欠かせません。使用しているOS、アプリケーション、ミドルウェアなどに関するベンダーのセキュリティアドバイザリや、JPCERT/CC、JVNなど公的機関からの脆弱性情報を、定期的にチェックしましょう。
定期的な脆弱性診断の実施
脆弱性診断を定期的に実施することで、自社システムやネットワークにどのような脆弱性が存在しているかを把握することが可能です。
また診断で洗い出した脆弱性を、重要度の高い順に修正することで、リスクの最小化を図ることができます。
脆弱性診断には「手動診断」と「ツール診断」の2種類があり、自社のリソースや課題を踏まえ、最適な診断を選択することが推奨されます
それぞれの診断方法のメリット・デメリットは以下の通りです。
手動診断 | ツール診断 | |
---|---|---|
診断方法 | セキュリティ専門家が、「手作業」で脆弱性を検査する方法 | ・専用のツールを使用して、自動的に脆弱性を検査する方法 |
メリット | ・ツールでは見つけにくい「複雑な脆弱性」や「ビジネスロジックの問題を突いた攻撃」を発見しやすい ・特定のニーズや状況に応じて診断方法を柔軟に変更できる ・誤検知が少ない |
・短時間で広範囲のチェックができる ・手軽に低コストで実施できる ・一般に認知されている脆弱性の検出精度が高い |
デメリット | ・診断する担当者のスキルに依存してしまう ・実施に時間がかかり、コストが高くなる場合がある |
・複雑な脆弱性、ビジネスロジックの問題を突いた攻撃等を見逃しやすい ・誤検知の可能性がある ・ツールによっては、大量の指摘事項が検知され、対応の優先度決めや脆弱性管理工数にコストがかかる ・ツールの設定に不備があり、適切な診断ができない可能性がある ・新しい脆弱性に対応できない場合がある |
IT資産の適切な管理
脆弱性への対策で忘れてはいけないのが、社内に存在するハードウェア・ソフトウェアといったIT資産の適切な管理です。
管理が行き届かず、古いバージョンのソフトウェアや未更新のシステムが残存すると、攻撃者に狙われるリスクが高まります。
このようなリスクを回避するためには、社内のIT資産管理を徹底し、保有するすべてのハードウェア・ソフトウェアのバージョンやサポート状況を正確に把握する必要があります。
IT資産管理を実施する際のポイントとして、以下が挙げられます。
- 情報資産管理台帳の作成による資産の一元管理
- セキュリティパッチの適用
- サポート終了製品の排除
- 自動更新機能の有効化
IT資産の管理を効率的におこなう方法として、ツールの活用が推奨されます。
「LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版」は、PC・スマホがクラウド上で一元管理できるIT資産管理・MDMツールで、管理コンソール上で、最新の情報資産台帳の自動作成が可能です。
より詳しい機能が知りたい方は、下記のページをご参照ください。
LANSCOPE プロフェッショナルサービスの脆弱性診断
LANSCOPE プロフェッショナルサービスでは、12,000件以上のサービス提供実績と90%以上のリピート率を誇る「脆弱性診断・セキュリティ診断」を提供しています。国家資格「情報処理安全確保支援士」を保有する診断員が、安心の技術力と専門性で支援します。
「Webアプリケーション脆弱性診断」では、様々なサイバー攻撃に悪用されるWebアプリケーションの脆弱性をきめ細かな調査で明らかにし、有効な対策を提案します。
またWebアプリ以外にも「ネットワーク診断」「Iot脆弱性診断」「ペネトレーションテスト」など、複数の診断サービスの提供が可能です。
「診断結果」は自社サイトが抱えるリスクを「点数」で可視化することが可能。「報告書」には、経営層が自社サイトのリスクを把握するための、エグゼクティブサマリーや、発見された脆弱性の対策・修正提言なども含まれます。
効率的かつ網羅的に、優先順位をつけてWebサイトの課題に対策することが可能となります。
また、診断内容を重要項目に絞り、より低価格で脆弱性診断を受けていただける「セキュリティ健康診断パッケージ」も提供しております。詳細は下記よりご覧ください。
まとめ
本記事では「脆弱性」をテーマに、発生する原因や放置した場合のリスクなどを解説しました。
本記事のまとめ
- 脆弱性とは、システムやソフトウェアに存在するセキュリティ上の弱点であり、設計ミス・人為的ミス・外部要因によって発生する
- 脆弱性を放置すると「情報漏洩」「マルウェア感染」「社内システムの不正侵入」など、深刻なサイバー被害につながるリスクがある
- 脆弱性を早期に発見・修正するため、「最新の脆弱性情報の収集」「定期的な脆弱性診断」「IT資産の適切な管理と体制整備」などが有効
脆弱性を完全に無くすことは困難ですが、早期の発見・修正により、攻撃者に悪用されるリスクを低減することが可能です。
深刻なセキュリティインシデントを未然に防ぐためにも、定期的な脆弱性診断やセキュリティ体制の見直しをおこないましょう。
「脆弱性診断の進め方・ポイント」をまとめた資料もご用意しているので、ぜひご活用ください。

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